歳哉はもう、小窓から逃げるしかないことが分かっていたから、さっさと小窓に手をかけた。

 一応下を見てみると、特に変なヤツはいない。


―――ん?誰かいる!?


 しかし、よく見ると明らかに総祐だったので、小声で声をかける。


「そーうーすーけー!」


「うわっ!」


「こら大声だすなよ!ちょっと道場の方を見て来てくれ!後で俺も行く!」


「了解♪」



 総祐の背中を見送った後、歳哉は戸口の方を向いて言った。


「おい、もう誰がいるかわかってんだろ?誰だかしらねぇが八重をおいてけよ。」


 すると、戸口の方から返事が聞こえた。


「なぁんだばれてんのか。だがこの女は渡さねぇからな。あわよくばてめぇもつかまえようと思ったのによ。ガキがいきがりやがって」


「よくもまぁベラベラとしゃべりやがる。隠密行動ってのは黙ってするもんだぜ」


 そう言い残して歳哉は小窓から飛び降りた。