この小判は見覚えがある。しかし歳哉には、何のためのものかは分からなかったので、とりあえず特徴を覚えた。


(あとは証拠湮滅…っと)



 歳哉は部屋の中を完璧にもとに戻し、部屋を出ようとした。


 が………。そういえば戸口は鉄で閉められている。となると、道場につながる廊下へと出れる戸口からでるしかない。

 だが、道場につながっている方の戸口から出入りすると誰かに目撃される可能性が高いと思ったから入るときに使わなかったのだ。

 さて、どうするか。やはり入って来たところから出るしかない。


 そう思った時だった。



「先生ー?お戻りですか?」



 道場につながっている方の入口からだれかの声がした。