そんな中、遠くから2人の様子をながめていた年長者3人組はというと………


「おい。勇大、助之丞、八重。」



 背後から重みのある声に呼び出された。


―――そう、鬼谷先生である。


 いつもは少しお茶目な一面を見せる先生だが、稽古の時など、いざとなったら急に威厳が増す。

 そんな状態の先生に逆らえばどんな目に遭うか、門人達はよく知っているからこそ、真面目に返事をした。


「はい」

「如何用でしょうか?」

「稽古がはじまるまでに歳哉と総祐を連れて来た方がよろしいんで?」


 八重、助之丞、勇大の順にそれぞれが答えた。


「よくわかったな。早く連れて来い。もう他の門人達は道場に集まっておる。

それから………」


「それから何でしょう?」


「いや、よい。いずれわかる。」


 素早く返答した勇大だったが、鬼谷先生にしては珍しく、あいまいな言葉を返してきた。


 3人に少しばかり心配の念がよぎった。



 そして3人は目配せをし、助之丞は走って歳哉たちを呼びにいったのだった。