「あ゛ー」


 ゾンビのような声が響く。

 そう、先程、八重の前に散っていった勇大と助之丞だった。


「おーいてぇー」



 2人はうめき声をあげながら立ち上がった。

 なんたる生命力なんだこの2人…。



「なぁんだ。生きてたの?」


 八重は残念そうに言い放った。―――鬼か。




「それにしてもよぉ、歳哉のヤツ、無実なのは分かっててからかったのになぁ…」


 勇大がのんびりとした声を発した。


 そこで助之丞の顔が引きつったのは言うまでもない。


「えっ…分かってたの?勇大………」

「ったりめぇだバカ!お前と八重が稽古したら絶対に被害者が出るんだからな!」


 勇大のその言葉を受け、八重は勝ち誇って言った。


「あぁら助之丞…そんなことも分かんなかったなんてねぇ」


(八重よ、少しはお前も反省したらどうだ…)


 その場にいた人がみんな思ったに違いない。


 それから勇大、助之丞、八重の3人は口論を始め、ついには木刀を構えて、勝負だとかなんとか叫び始めた。


 その隙に、ずっと歳哉のことを思案していた総祐は、こっそりと道場を後にした。



(俺の存在って何なの………)


―――鬼谷先生は未だに床に寝転んでおり、3人の闘争に巻き込まれて死にかけていた…。