俺は岳への怒りを目の前の
男で発散する。


「ウッ…。ウッ…ゲホ…許して…くれ…」


何で…何で守ってやらねぇんだよ…。


果懍の事が好きなんだろ?


「陸…陸…… 」


岳…何で果懍を置いて逃げたんだよ…。


「陸!!…陸!!止めろ!!」


誠也の声に俺の手が止まる…。


「もうそれ位で止めとけ!!そいつ死んじまうぞ!!」


気付くと俺の拳は血で真っ赤に
染まっている。


「ハァ…ハァ…二度とこの女に手ぇ出すんじゃねぇぞ…ハァ…。」


「…わ.わか…ったよ。」
男は這うように逃げて行く。

もし…誠也に
止められなかったら俺は本当に
コイツを殺してしまってたかも
しれない…。


「陸君…」


果懍が泣きながら俺の手を
取って手に付いた血をハンカチ
で一生懸命拭ってる。


果懍が震えていた。


「……大丈夫か?」


「……陸君が来てくれなかったら
私……。」


そう言うと果懍は俺の胸に
顔を埋めながら声を上げて
泣いた。


震える身体を思いきり抱き締めてやりたいと思う。


でも…抱き締めてやる事は俺の
役目じゃないんだ…。


岳…お前の役目じゃねぇのかよ…。