「楓花♪あぁ〜起きちゃい
ましたかぁ♪
じゃあパパが抱っこしてあ
げまちゅねぇ♪ヨイショ♪」


「…はぁ!?」


「フギャ!!フギャ!!」


「お腹が空いたのかなぁ♪
じゃあママにミルク作って
貰おうねぇ♪」


「…テメェが無理矢理
起こしたから楓花は泣い
てんじゃねぇのかよ!!」


「お前さ…人聞きの悪い事
言うなよ!!
楓花は腹が減ってんだよ!!
桃♪楓花がお腹空いたって♪」


「………。」


誠也の今までに見た事も
無いデレデレ顔…。


なぜか?赤ちゃん言葉の誠也…。


俺は誠也の親バカ振りに
見てはいけない物を見て
しまった気がしている…。


佐伯が自分の命に変えて
でも産む事を望んだ子供
が半年前に誕生した。


楓花。


誠也が名付けた。


楓花が佐伯のお腹に宿り産むと
決めた時から誠也が考えていた
のを思い出す。


子供の名前事典の本を片手に
あんなにも真剣な誠也を見るのも
初めてだった。


「両方の名前考え
とかなきゃな…。」


会社の昼休みの時間でも
一気に弁当を食い…後は
昼休みが終わる寸前まで
本を手放さなかった。


楓花の産声を聞いた時の
誠也の涙も俺は忘れられない。