「佐伯は…何て言ってんだ?」


「絶対に…産むって…。
桃には何の迷いもねぇんだ。
自分の命が危なくなるかも
しれないのに…。
俺の子供が欲しいって…あんなに
強い桃を見たのは初めてだった。」


「…………。」


「もし…今回.子供を諦めて
手術しても…後の事を考えると…
子宮摘出も頭に置いといて
くれって…医者が言うんだ…。」


「……じゃあ…もう二度と
佐伯は…子供が産めない…
って事なのか…?」


「……あぁ…。陸…俺…
桃を失いたくねぇんだよ。
俺の…考えてる事って…
間違ってるのかな…俺って
最低な男なのかな…。」


なんで…神様はこんなに
優しい奴に酷い試練を与
えるんだろう…。


ただ…みんなと同じように
平凡な幸せを求めているだ
けなのに…。


女の人にとって子供が
産めないと言う事は俺達
男が想像する以上に辛い
事だろう…。


授かった最後の命。


佐伯が自分の命に代えてでも
誠也の子供を産みたいと思う
気持ちは佐伯にすれば一切の
迷いも無い…当たり前の感情
なんだと思う。


でも…。


もし…俺が誠也の立場
だったら…。


誠也と同じ事を考えて
いたかもしれない。