本当は食欲なんて無かった…。


婆ちゃんは昨日から俺の
様子がおかしいと感じて
いるはずだ。


婆ちゃんには余計な心配を
掛けたく無かったのに…。


婆ちゃん…ごめん。


パジャマ代わりのスウエットから
服に着替えていると携帯が鳴る。


「陸.着いたから降りて来いよ。」


家を出ると何度見ても怪しい
黒のベンツが止まっていた。


助手席に乗り込むと拓海君は
何も言わず車を出す。


拓海君が俺に会いに来た訳は
だいたいの想像が付いていた。


「陸…悪かったな…。
まさか果凜が男と一緒に
帰って来ると思わなかった。」


「………。」


「果凜…昨日ずっと自分の
部屋で泣いてた。
陸君にひどい事したって…。
陸…俺には本当に果凜が
その男の事が好きだとは思
えねぇんだよ。
同じ時期に留学した男らしいん
だけど…辛い時って人間は弱く
なってるから…それで…」


「果凜に辛い思いさせたのも
辛い時に一緒に居てあげれ
なかったのも俺なんです。
全部俺のせいなんです。」


「お前達が決めた事なら俺
は何も言えないけど…
俺は果凜にはお前と一緒に
なって欲しかったよ。」


「………。」