俺は男の言葉を背中に受けて
果凜の元に急いだ。


-ピンポン♪-


果凜…出てくれ…。


俺.お前に伝えなくちゃ
いけない事があるんだよ。


-ピンポン♪-


「…はい。」


居た…。


「俺…。話しがあるんだ。
少し出て来てくれないか?」


「………。」


「果凜?…今更かもしれないけど
お前に伝えたい事があるんだ。」


果凜…俺にもう一度だけ
チャンスをくれ。


「……待ってて。」


「わかった。」


再び俺の前に現れた果凜は
泣いていたのか目が赤い。


また俺のせいで果凜は
泣いていたんだろうか?


「ごめんな急に…。」


果凜は声を出さずに首を
横に振った。


ずっと忘れられなかった
女が俺の目の前に居る。


抱き締めたいと思う。


そんな衝動を果凜の思い詰めた
表情が許さなかった。


俺は果凜を車に乗せ
宛ても無く走り出す。


助手席から懐かしい果凜の
香水の匂いが流れてきた。


手を伸ばせば俺のすぐ側に
果凜が居る。


でも…触れる事は出来ない。


あの頃…俺さえ素直な気持ちを
果凜に伝えていたら…。
今も果凜は俺の腕の中で笑って
いただろう。