立ち尽くしていると誠也の車が
俺の前で止まった。


「陸.乗れよ。帰るぞ…。」


「………。」


俺はゆっくりと助手席に乗り込む。


「ゥゥ…ッッ…。」


鳴咽と共にまた涙が溢れ出す。


俺は拳で口を塞いだ。


「……ッッ…。」


「陸.我慢するな…。」


誠也の言葉に咳を切ったように
俺は泣いた。


車の中のBGMが
俺の泣き声で掻き消されて行く。


「誠也…ッッ…俺…バカだよな…。」


「あぁ…大バカ野郎だよ。」


誠也らしいと思った。


俺の本当の気持ちを分かって
いるからこそ言える言葉。


今日ほど.誠也の安全運転が
心地良く感じた日なかった。


ゆっくりと変わって行く外の
景色をずっと見つめながら俺は
果凜の幸せを願ったんだ。


家に着くとリビングで
婆ちゃんが電話で話していた。


俺は泣き腫らした顔を見られたく
なくて2階に上がろうとした時だった。


「じゃあ.身体が完全に戻るには
まだ時間が掛かるって事かい?」


身体が戻る…?


誰の事なんだろう…?


「お前も辛いだろうけど岳も
辛いんだよ。辛抱しろよ。」


岳…?


アイツ…今は元気にまた学校に
通ってるんじゃねぇのかよ?