「お帰り…星野に会えたのか?」


岳が遠慮がちに聞いてくる。


俺の泣き顔を見て何かを察したんだろう…。


「会えたよ…。」


「えっ!!星野に会えたのか?」


「あぁ…。」


「で?…どうだった?」


「何がだよ!!」


岳の問い掛けにも不審感を抱く。


何を探りだそうとしてんだ。


今の俺には全ての人間が信じられ
ずに疑ってしまう。


「いや…星野の具合…面会謝絶に
なってるって聞いたから…。」


「……風邪こじらせただけだ。」


「そ.そっか…早く治るといいな。」


「………。」


俺は部屋の中へと入る。


扉を閉めると涙が溢れ出す。


「ツッ…果懍…ツッ…」


俺は泣き声が洩れないように
ベットに潜り込んだ。


涙がとめどなく流れる。


「俺はどんな事からもお前
を守ってやる…。」


そう果懍に誓ったのに。


守ってやれなかったんだ…。


「会えたよ…。」


岳に言った言葉は嘘だった…。


俺は果懍の気持ちを考えて
会わずに病院を出た。


果懍や拓海君の気持ちも考えずに
俺は自分の想いだけを押し付けてた。


そんな俺に長い間の沈黙の後
拓海君は意を決したように話
してくれたんだ…。