どうやって家に帰って来たんだろう…。


気付いたら家の前…入るなりいつもの様にお袋が怒鳴ってくる。


「陸!!何時だと思ってるの!?
いつも早く帰って来なさいって
言ってるのにあんたは何度言っ
たらわかるのよ!!」


今の俺はそんなお袋の怒鳴り声
も微かに耳に入って来るだけで
言い返す気力もない。


頭の中は果懍の事で一杯だった。


また不意に涙が頬を伝う。


「聞いてるの!?返事くらい!!…
陸……どうしたの?…陸?」


「……何でも…ねぇよ…。」


「何もない訳無いでしょ!?
何があったの?あんたが泣く
なんて余程の事が無い限り…」


さっきまで怒鳴っていたお袋が
俺の涙を見て戸惑っていた。


大きくなって自分の感情が押さえ
切れずお袋の前で泣いたのは祐輔
が死んだあの日以来の事だった。


あの時も祐輔の死を受け止め
られずにずっと泣いてたっけ…。


「本当に…何にもねぇよ…。」


「陸…。」


お袋は心配そうに俺を見ている。


一人になりたくて俺は自分の
部屋に向かった。


部屋に入ろうとした時.岳が
部屋から顔を出す。


俺の泣き顔を見て岳が一瞬驚いた
顔を見せた。