「とにかく…果懍は面会謝絶
なんだ…会わす訳にいかない。」


「一目でいいんです会わせて
下さい…。お願いします!!」


「………。すまない。」


拓海君が俺の前から立ち去ろうと
している。


「…俺…こんなに人を好きに
なったのは果懍が初めてなん
です!!本当に果懍がそう思っ
ているなら…俺…諦めます。でも
今のままじゃ諦めきれない!!」


一瞬立ち止まった拓海君がまた
離れて行く…。


「……会わせてくれよ…。」


気付くとロビーには誰も居なく
なっていた。


診察時間が終わった病院では
見舞い客なのか俺の前を通り
過ぎて帰って行く…。


ロビーにある時計を見ると
もうすぐ夜の8時になろう
としていた。


俺はここに4時間以上も座って
いた事になる。


この病院の面会時間は8時まで。


でもまだ俺は諦められずにいた。


果懍に会いたい…。


会って果懍にはっきり言われたら
俺は身を引こうと思っていた。


諦めるにはどれだけの時間を
費やせばいいのか想像がつかない…。


でも…果懍が本当に俺との別れを
望んでいるなら身を引くしかない。


俺はずっとそんな事を考えていたんだ…。