初めて会った奥さんは、想像していたよりも元気そうだった。

「母さん、この子がバイトの千恵ちゃん。」

悟さんが私の紹介をしたので、私は軽く頭を下げた。

「いろいろごめんなさいね。体調自体はかなりよくなってるんだけど、まだお店に出るまでの体力がないのよ。」

「私なんかでよければ…。できるだけのことはしますから、何でも言ってください。」

「ありがとうね。」

それから、私の料理修行が始まった。

修行と言っても、全然キツくなくて、むしろ私は楽しんでいた。

私は飲み込みが早いらしく、奥さんもすごく喜んでくれた。

1ヵ月もすると、私はお店で料理を作るようになっていた。

私がお店にいる時間は限られているから、すべての料理をカバーすることはできないけど、昔からの常連さんは、奥さんの味だ、と言ってくれた。