落ち着いたあと、私と美香は高橋くんと前田くんの元へ駆け戻る。
高橋くんは「じゃあそろそろ行きますか!」
と、得意気にチケットを見せた。
見渡す限り、人、人、人。
酔ってしまいそうな人数に私は空を見た。
今からこの空に花火が上がるのかと思うと、胸が高鳴る。
きっと世の中のカップルはこの一瞬の輝きが永遠になるんだろうな、と思って目を閉じた。
「そろそろ、だね。」
前田くんが呟く。
「うんっ。」
私も頷く。
「…前田くん、私…」
「返事はいいよ。」
「へっ…?」
「あの時の返事は、いいよ。」
驚いて横を向くと、
「めぐちゃんの気持ち、ずっと知ってたのに、困らせてごめん。」
予想もしなかった言葉。
前田くん…ずっと気付いてたの?
「でも、そんなめぐちゃんがほっとけなくて…気付いたら好きになってた。
だけど、無理矢理の恋愛なんて嫌だから…
言われなくても返事はわかってたしね。」
前田くんは、片眉を下げて苦笑した。
「前田くんっ…」
―ブーブーブー…
突然鳴りだすバイブ。
そこには、
『三橋 健』の文字。