「そーいや健は?」
美香が思いついたように、2人に尋ねる。
そういえば三橋くん、まだ来てないな。
「あー、あいつね、バイト入ってるらしくて間に合うか間に合わないかの瀬戸際らしい。」
高橋くんは
「バカだよな〜、あいつは。」
とわざとらしく頭をかいた。
三橋くん…来ないんだ。
一緒に見れるかと思ったのに、残念。
浴衣姿、見てほしかったな…。
「いかにも残念って顔だね。」
前田くんは私の横に並んで顔を覗き込んだ。
「えっ…あっえと、せっかくみんなで見れると思ったのに淋しいなって思って…。」
「そ。まぁ健がいなくても満足させられるように頑張るよ。」
そしていきなり私の手を握った。
「前田く…
「高橋〜!早く屋台行こうぜ!」
「おっけ〜!んじゃまずは金魚すくいだな♪
美香ちゃんも行こっ!」
そうして私たちは屋台へと歩きだす。
手は繋がれたまま。
私は前田くんの背中を見つめた。
そしてふと思う。
―彼を好きになれたら、幸せなのだろう―
だけど今は、人混みに流されないのが精一杯。
離れないように、手を握り返した。