「ちょっ…前田くん!」


「何それ、俺聞いてない。」


「当たり前だろ。お前に言うわけ…てか、言えるわけないだろ。


それぐらい解れ、女心。」


前田くんからまさか『女心』
という言葉が出るとは思わずびっくりしたけど


私の代わりに代弁してくれて、正直嬉しかった。



「…じゃ、俺は帰るわ。
健、ちゃんとめぐちゃん送ってけよ?」


「よいしょ」と立ち上がると、前田くんは転がった鞄を拾い上げた。


その瞬間ぶつかる瞳。


前田くんは目を細めて笑う。


そして、
靴音を残しながら消えていった。