先輩は、透き通るような茶色のショートカットの髪に、色白の肌。
ハッキリとした顔立ちにスラッとした体型。
背はわりと高い。
俺は先輩が通り過ぎる一瞬の間にこれだけの事を記憶した。
名前は綾。あだ名かもしれないが…

「涼、今の人綺麗だねっ」

愛は綾先輩をじっと見つめながらわくわくとした口調で俺に同意を求める。

「…あぁ。」

俺は否定する理由も無かった為、小さく頷いて見せた。
先輩は愛の視線に気付いてしまったらしく、こちらへと向かって歩いて来た。

…え、やばくね?

そう思った時には遅く、先輩は既に愛の前に立っていた。

「…何?なんか用?」

あ…声。結構、低い。
ハスキーボイスってやつ?

「あの、あたし陸上部のマネジやりたいです!」

愛は先輩を怖がったりせず、つかむしろ食い尽く感じで先輩の前に勢いよく立った。
先輩のハスキーボイスとは正反対に、甲高い愛の声は耳に響く。