あたしはなんだかいろんなことが恥ずかしくて、顔を真っ赤にしながら話した。

「乙女チックなロマンチストだから、桜好きなの!」
「へぇ、楽しい?」
「超楽しい」

わざと“超”の言い方をチャラくして言ってやった。

夏木はずっとニヤニヤしながらあたしを見上げていたけれど、思い付いたように自転車を脇に止めた。

「俺も見よ」
「え!?」

言うが早いか、夏木はマンションの入り口をスタスタと入っていく。

あたしは屋上から身を乗り出して、その様子を見つめていた。

しばらくすると、屋上の重い鉄の扉が、ガタンと音を立てて開かれる。

現れたのは、本当に本物の、正真正銘の夏木だった。

ええー…いや、ほんとに、ええー?

もうあたしの心臓はドキドキからバクバクに変わった。

夏木は物珍しそうに、屋上を1周見回して、あたしのいる場所で目を止めた。

ジャリ、とスニーカーでコンクリートを踏みしめながら近寄ってくる。

バクバクバクバク

その間のあたしの心臓は、本当に破裂しそうなくらいだ。