夢梨が見せる一喜一憂する姿は、空っぽだった俺の中にどんどんと浸透していく。
まるで切り落とされた根から水を得、咲く花みたいに……俺もまた、夢梨に生きていく元気を貰っていた。
だから俺は、夢梨が注文したアイリスと霞草の花束を作っているとき、どうしようもなく不安になったんだ。
アイリスの花言葉も、霞草に込められた意味も知っていた。
いつもより可愛らしく着飾った夢梨は、その大切な想いを持ってどこへ行くんだろう……。
頑張って作った花束を受け取り、嬉しそうに笑う夢梨。
その笑顔……今から誰に見せに行くの?
そう思った瞬間、
「受け取ってくださいっ!」
ガバッと頭を下げたかと思えば、花束が再び俺の手の中に戻ってきていて、
「えっ、あっ」
戸惑う俺の前から逃げるように駆け出して……。
転びそうになったのを反射的に受け止めたら、
思いの外、自分の胸がドキドキと高鳴っていることに気がついた。
そして、思い出す体温の心地よさに……もっと触れたくなった。