きっとわたしより年上なんだろう。



小さく付け加えた言葉が、耳に焼き付いて離れない。




「ありがとうございました」



袋に入ったアガパンサスを受け取り、出口に向かう背中に声が掛かった。



右手に提げたアガパンサス。
ごめんね。
わたしが知りたいのは、その名前じゃないんだ。



「あのっ」


「はい?」



くるりと方向転換し、爪先をもう一度彼に向ける。



不思議そうな顔。



この際、変な娘だって思われたって良い。

何故だかわからないけど、今聞かないとダメな気がするんだ。




「名前教えて下さいっ。……花じゃなくて、アナタの名前っ」



吐き出した瞬間、頬がカァッと紅潮していくのがわかる。



目の前の彼は驚いたように目を見開いて、


「……俺の名前?」


小さく首を傾げた。
真っ赤な顔のままわたしは深々と頷き、彼をじっと見つめて反応を窺う。



……嫌がられたらどうしよう。

今更そんなことを思った。