「お前がまた歌えるように、俺が何とかする」
「え…?」

何とかする…?
何でよ…先生、全然関係ないじゃん…。
先生の目は真っ直ぐに私を見つめている。

「…失礼します」

私は先生への信じ切れない思いを抱きながら、職員室を後にした。


これは「キレイゴト」っていうやつ…?
あの先生っていわゆる「熱血」なんだろうか。
…そんな風には見えないけど。
何でこんなに私に構うんだろう。接点って言ったって、合唱が好きだってだけでしょ?
何か気持ちワル…って考えてしまうのは自惚れ過ぎか?

でも、先生の言葉はことごとく私の本心を抉ってきた。
「わかってる」って言ってた…。
助けるって…何をどうするつもりなんだろう…。
あの自信に満ちた目は、何故なんだろう…。


そんなことを悶々と考えているうちに、あっという間に昼休み。
全然授業に集中出来なかった…。
「美歌ぁ、何そんなに悩んでんの?」
「マジ眉間にシワ寄ってんよ」
友人達がお弁当を食べながら私の顔を覗き込む。
「…別に…」
私は眉間を指で揉みながらおにぎりを頬張った。

「それってさ、朝のことと何か関係あんの?」

えっ!?

「いや…誰かがさ、職員室で美歌が先生に向かって怒鳴ってたの見たとか言ってて」
「あたしも聞いたー。深見先生でしょ、それ。つか美歌が怒鳴ってるとかってあり得ないっつーか…そういうキャラじゃないからみんながびっくりしてたけど」
「…いつの間にそんな話広まってんの?」
今更ながら恥ずかしさが込み上げてきて、両手で顔を覆った。