「好きって…何でそんなこと…」
「楽しそうに歌ってたからさ。好きじゃなきゃ、あんな風には歌えないだろ」

楽しそうに笑顔で話す先生に、私は戸惑うばかり…。
「お、時間だ。じゃあ聴いたらぜひ感想教えてくれよ」

そう言って、私を置き去りにしてバタバタと職員室を出て行ってしまった。
呆然と佇む私の耳に飛び込むチャイムの音。
「あっ、プリント…!」
私は慌てて担任の机からプリントの束を抱えて教室へ向かった。
手の中のCDが気になる…。
早く帰ってCD聴きたい…。
放課後の居残りは止めて、帰り道を急いだ。
何でだろう…どうしてこんなにワクワクしてるんだろう…。


家に着くと自分の部屋に駆け込んで、着替えも後回しにCDをデッキに入れた。
ベッドに寝転がってCDのジャケットを眺めていると、聞こえてくる透明な響き…。
私は目を閉じた。

静かで神秘的な、まるで夜空にオーロラが広がるような…
これが本当の『夕べの歌』か。
私たちって、どれだけテキトーに歌ってたんだろう。
何を歌っても『ただ歌ってただけ』だったな…。
聴いただけで、満たされるこの感じ。
こんな風に歌えたら、どんなに気持ちいいだろう…。
私もこんな風に…――

「美歌、何やってるの?まぁ、着替えもしないで」
突然の母の声が私を現実に引き戻した。
あーあ…。