放課後に何もすることが無くなった私は、毎日教室に一人残って勉強していた。
私の数少ない友人たちも毎日部活があるから、放課後に遊ぶことなんて滅多にない。
みんなが部活や好きなことして頑張ってるのに、同じ時間に自分だけ塾に通う気にもなれないし…。

そんな日々を過ごしているうちに、秋も深まってきていた。
問題集を解いていると、校庭に面した窓の外から運動部員たちの掛け声や足音が聞こえてくる。
廊下の向こうからは、吹奏楽部のパート練習の音がする。

「…みんな、頑張ってるなぁ…」

楽しそうな笑い声とか聞こえてくると、何だか羨ましくなって勉強にも集中出来なかった。

今の私って、物凄くつまんないヤツかも…。
みんな、やりたい事やってて充実してるんだろうな…。
私には勉強しかすることがないなんて…ああ、何てつまんないんだろう。

私は問題集を投げ出して席を立った。
窓辺に寄り掛かって外を見ると、空が夕焼けに染まっていた。
また今日も、つまらない一日が終わっていく…。
そういえば、1年の時に「夕べの歌」っていうの歌ったなぁ。
ハンガリーの言葉だったから、苦労して覚えたんだよね。

〜♪

暮れていく空をを見ながら、その歌を小さくハミングしてみた。

あ…何か気持ちいい。いいメロディだなぁ…。
誰も聞いてる人なんかいないし…小言でなら歌っても大丈夫だよね…?

『♪〜♪〜〜♪』

「…『夕べの歌』か。いい声だな」

突然背後から聞こえた声に、私の心臓は跳ね上がった。
振り向くと、教室の入口に立って、男の先生がこっちを見ていた。