「美歌。このまま部員集める気ないんだったら、残念だけど合唱部の活動は続けられないよ」

文化祭の数日後、顧問の音楽の先生からの最後通告。
事情はわかる…。
このまま部員一人の合唱部と吹奏楽部の両方を面倒見るよりは、常勝吹奏楽部に集中した方が、学校の負担にも先生の負担にもならなくていいって事ぐらい…。
教師が物凄く忙しいって事は、私の父も教師だから十分知ってるつもり。
私もこれ以上、部員一人の分際でいつまでも迷惑かけるつもりはない。
しかも、引っ込み思案で目立たなくて自信もない私には、一人で入部を呼び掛ける勇気もない。

「私…合唱部、やめます」

こうして、最後の一人だった私が退部し、合唱部は夏休みを前にして廃部になった。


「よかったんじゃない?早く受験勉強に取り掛かれるんだし。どうせ合唱やってても大した目標も無かったでしょ」

母の言葉には少し傷付いた。
あんな部でも、みんなで合唱するの楽しかったし、何より、歌うことが好きだったから。
でも、母の言葉に言い返すことは出来なかった。
だってもう、どうしようもないじゃない。
一人で合唱なんか出来ないんだから…。
今更他の部に入ろうとも 思わないし…何かもう、どうでもいい。