ただ合唱が好きだっていうだけで、こんなに熱心にされても…私はその期待に応えられるか自信がない。

私の質問に、先生は手を差し出したまま笑顔で言った。

「美歌が合唱部に入部した時から練習の様子を廊下歩きながら聴いてたんだ。いい声の子がいるなと思って。俺は美歌の声が好きなんだよ」

…私の声…

急に顔が熱くなった。
例えお世辞だったとしても、今までそんなこと言われたことないからすごく嬉しい…。

クラスの中でも目立たないし、あんな小さな合唱部の中にいても、この先生は私を見つけて、見ていてくれたんだ…。

「…よろしく、お願いします」
私は手を伸ばして、差し出されていた先生の手を握った。
先生はニカッと笑って、力を込めてその手を握り直した。
「よぅし、頑張ろうなっ、美歌」


その後、先生と私は二人で校長先生に合唱部活動再開のお願いに行った。

「…わかりました。二人がそこまで熱意をもっているのなら、活動を認めましょう。但し、今年度中に来年度の活動継続が見込めなければ、また考えなければなりませんな」

「やった…!よかったな、美歌!」
「あ、ありがとうございます…!」


条件付きの活動再開。

それでも私と先生の間には希望の笑顔があった。