…そうか。
私は『合唱部』という名前に囚われ過ぎていたのかな…『合唱』が出来ないならもう活動出来ない、って思い込んでた。

「でも私…顧問の先生からも『もう無理じゃないか』みたいに言われたんですよ?それって学校側も迷惑だって思ってるっていうことじゃないんですか?」

先生は参ったなっていう顔をして頭を掻いた。

「まぁね、学校側の事情ってのも確かにない訳じゃない。でもさ、だからって生徒の意欲を叶えてやれないなんておかしいよな。俺は、そういう生徒がいたら自分に出来る限りのことをしてサポートしたいって思う。ま、俺は他の先生よりヒマだし、余計なお節介かもしんないけどさ」

って言ってイシシとはにかむ。

タロさんのことも、こういう想いがあったからだったのか。
そして、私も…。

「どうだ、美歌。歌いたい気持ちがあるなら『合唱部』続けないか?美歌にその気があるんなら、俺が顧問になってもいい。校長に活動再開を認めてくれるように話つけてやる」

「先生が顧問に…?生物部は?」
「掛け持ちになるけど、あっちはほとんどタロ一人で何でもやっちゃうから、実際俺特に何もしてないんだよね。だから大丈夫」

「いや、でも大変でしょう?」

「俺がそうしたいって言ってるんだから心配すんなよ」
先生は私に右手を差し出して握手を求めた。
「一人で出来ることから初めてみようじゃないか」

私はその手を握り返すことを、まだちょっと躊躇していた。

「こんなに親身になってくれるのは…先生が合唱好きだからですか?」