放課後、私の足は理科室へ向かっていた。
私の疑問を解決するために。
あの先生の言うことを信じて関わっていいものか…
何だか不安だけど、このすっきりしない気持ちのまま過ごすのも、先生に待たれるのも何だか嫌だし。

私は緊張しながら理科室のドアの前に立った。
トントン。

「――はい、どうぞ」

中から男の人の声。
恐る恐るドアを開けると、窓際に一人、男子生徒が水槽の魚に餌をやっていた。

「あの…深見先生がここにいるって聞いて来たんですが…」

私の問いかけに振り向いた彼は、背が高くて、眼鏡をかけた優等生タイプ。ちょっとかっこいい…。
襟章の色を見ると、3年生だった。

「あぁ、先生なら隣の準備室だよ。呼んできてあげる」

『先輩』は理科室の中から繋がる準備室のドアをノックして開けた。
「先生、用があるって生徒が来てます」
すると、奥から「おぅ」と声がして、深見先生が現れた。

来た…。
緊張が高まる。

「お、美歌。もう決心ついたの?」
私を見るなりいつもの笑顔。
…何か拍子抜けする。

「…いえ、とりあえず先生と話がしたくて…」
「あら、嬉しいねぇ。こんなトコで悪いけど、まぁまぁ座んなさいな」
先生はご機嫌な様子で、自分と私の椅子を用意した。
「じゃあ先生、俺終わったんで帰りますよ」
先輩が帰り支度をしている。
「おぅ、サンクス☆タロちゃん。じゃあね」
…『タロちゃん』?
先輩は先生の言葉に少し呆れたような顔をして理科室を出ていった。