｢えっ…これお前が書いたの？｣

クラスの男子は黒板を指差した。

｢まさか…朝来たら置いてあったんだよ｣


昨日、部室で拾った漫画ノートを読んでみた。

中学生同士の恋愛漫画だ。

主人公の名前は…佐藤あかねと平凡な名前だが、相手の男の名前は水澤直澄……水澤直人を一文字変えただけだ。

意識して読んでみると…容姿の特徴や、性格などなんだか直人に似ていた。

主人公の少女がおっちょこちょいなところや、奥手なところは書いた張本人の鳴海千紗に通じる。

そこで、西田は鳴海千紗は水澤直人が好きなのだと確信した。


｢マジかよ…痛いな｣

他のクラスメートたちもちぃの漫画の内容に失笑していた。


そんな事も知らずに、ちぃは気を取り直して登校してきた。

しかし、やはり足取りは重く、少し遅刻ぎみだった。

｢はぁ…｣

ちぃが校門に入ると、２年の校舎から声援が上がった。

｢………？！｣

｢よっ！漫画家さん！！｣

｢早くこの続き読みたいな～！｣

一人の男子がちぃのノートをひらひらして見せた。