母の死から、岬の人生は大きく変わった。高校を中退し、以前から憧れていたニューヨークへ留学を決意した。
放任主義の父は何も言わなかった。



「俺…直人に頼んだの、今回が初めてじゃないんだ」

『………?』

「俺ら、別れた後…お互い連絡先消したじゃん」

『………うん』

「でも…やっぱって直人に頼んで…」


…その時、聖也は初めて岬の留学を知った。

当時の会話を思い出した。


『留学?!聞いてねーよ!』

『聞いてねーてか、言われてねーんだろ』

直人は少し呆れたようにため息をついた。

『言われてたは言われてたよ!でも…ママが厳しいから無理って…』

『…………』

聖也は動揺のあまり、直人の表情の異変に気がつかなかった。

『あの母親が、よく許したよな』

『……お前、知らないの?』

『…なにが?』

直人は少し、複雑な顔をした。

『あいつの母親…事故で亡くなったって』

『え…………?!』

さすがに、聖也も驚きを隠せないようだった。


『いつごろ……?』

『お前らが、別れるちょい前くらいに…岬から電話あって』