落ち着いた聖也は、彩香のケータイに電話をかけた。





…なかなか、出ない。


それでもめげずにかけ続けていると、ケータイの奥から、声が聞こえた。


『……はい』

「……彩香?」

『…うん』

岬にはすぐに相手が聖也だとわかったようだ。


きっと出るのが遅れたのも、戸惑っていたのだろう。

「俺………わかる?」
『うん…』



「聞きたいこと…あるんだけど」

『なに?』

「いつから、留学決めてた?」

聖也は、岬の留学を後で知った。

『前からしたいとは思ってたけど…決心したのはお母さんの事があってから』

つきあっている当時も、岬が留学したがっているのは知っていた。しかし、過保護な岬の母がそれを許すはずもなく…半ば諦めていた。

「俺…知らなかった。お前の母さんが…死んだって」

『言わなかったもん…知らなくて当然だよ』

「何で言わなかったんだよ…せめて言ってくれたら」



シテクレタラ……?


『その時、聖也とは別れてたし…』


『信用…もしてなかったし』