直人は岬のケータイ番号を表示して見せ、聖也は黙って自分のケータイにうちこんだ。

直人は一息ついた。

「だから、早く体調なおせ」

「…わかった」




聖也を残して保健室を後にした直人は、何だかやるせない気持ちになった。

「…………っ」

階段の壁を思い切り殴りつけた。

「わぁっ」

「………?」

後ろを振り向くと、鳴海千紗が驚き顔で立っていた。

(ヒノケンと…同じ部活の…)

何度かヒノケンと絡んでいるのを見たことがある。

(ま、いっか…)

そのまま何も言わずに階段を上がり、屋上へ出て、タバコに火をつけた。

屋上へは、正面からのドアはいつも閉まっているが、上の小窓は開いていた。小窓も以前は鍵がかかっていたが、以前土屋と二人で協力して壊してからずっとそのままだった。小窓といっても、大の大人でも気をつければ通り抜けできる。

警備もドアのチェックはしても、台にでも登って見ないとわからない小窓の開閉までは確認しないのだろう。
自分はバスケ部なので、ジャンプすれば余裕だけれど。

「たた…」


コンクリートを思い切り殴りつけた拳には血が滲んでいた。

「…………」


直人は屋上の床に寝転び、そのまま目を閉じた。

「………ん?」

ポケットから落ちたケータイがふるえていた。