直人はカーテンの外に出て、ケータイのメモリから岬の番号を探してかけた。


『…もしもし』

「おはよ…今時間いい?」

『…いいけど、どうしたの?』

「なんかさ…聖也が、お前にあいたいって」

『え……?』

岬は戸惑いの声を上げた。

「…嫌か?」

『何でいきなり…』
「まだ、気にかかってるみたい。…嫌なら、うまく断っておくけど」

そう言ってカーテン越しに聖也の様子を気にした。

『…嫌じゃ、ないよ…』

「…いい?」

『…水澤は、怒らない?』

「…何で俺?笑」

『水澤…嫌いじゃん。はっきりしないのとか』

「嫌いだよ…でも、会いたい会わないは当人たちの自由だろ?」

『……うん』

「じゃ、お前の番号あいつに教えてかけさせるって形でいいか?」

『いま、聖也と一緒にいるの?』

「ああ…今かわる?」

直人が確認するようにカーテンをめくると、バケツに嘔吐している聖也が見えた。

「…と思ったけど…無理ぽいから落ち着いたらあいつに電話させるよ」

『わかった…』

「じゃな」

直人はケータイを閉じて、聖也の背中をさすった。

「酒飲めないくせに、無理するから…」

「………ごめん」

「岬、OKだって」