翌々日の朝。

「おはよー♪伊澄ちゃん」

廊下を歩いていた伊澄はいきなり背後から何者かに抱きしめられた。

「わっ………風間くん?!」

「びっくりしたっ??」

「う、うん…」

(とっても…………)

「こないだごめんね」

「えっ?」

こないだ……と言われれば、保健室でキスされたことを思い出す。

「保健室でゲロったって?…俺、全然覚えてないんだけど」


(ゲロは……別にいいけど)

「それは、いいけど……。てゆうか………覚えてないの?」

「他に何かあった?俺、もしかして何かしちゃった?」

聖也は伊澄の肩をつかんだ。その顔はかなりマジだ。

(マジで覚えてない…)

「いや…あの、指輪忘れてあったよ」

伊澄は聖也の指を指でさした。

「ああ、俺もないな~思ってさ」

「土屋くんたちに預けておいたけど」

「そっか。取り返してくる!」

聖也の足取りは軽く、2年5組の教室へ向かった。

(よかった…元気そうで)

伊澄が安堵していると、聖也は振り返った。

「あ、伊澄ちゃん」

「ん?」

「また、保健室行っていい?」

伊澄の胸は、ドキンとはねた。

「え…?」

「まだ頭いたくて…」

「い…いいけど」

(まぁ……覚えてないみたいだし)

「ありがと!じゃ、また後で♪」