「直人が一番背が高いし…」

「土屋とヒノケンがいたっていいじゃん」

人を助けるときは、なるべくたくさんの人手があった方がいいのに。

「他の奴がいたら、アイツは強がる」

「キノ?」

「うん。でも直人の前だったら…素直になれるでしょ?」


キノと直人は同じ部活で、他の3人よりも絡む機会は多い。


『…俺、直人みたいになりたい』

以前、りょうにフラれたキノが涙目で直人に言った言葉だ。

背が高くて、クールで格好いい直人にキノは憧れていた。…自分はどれも持っていないから。男らしくありたいという気持ちは人一倍強いのだが。

そんなキノの気持ちを汲んで、りょうは土屋とヒノケンを呼ばなかったのだ。

「あんたになら、弱音だって吐けるでしょ。アイツ」

「…キノにできて、俺に出来ないこと、たくさんあるのにな」

「だろーね、あんた頭おかしいもん」

りょうの毒舌に直人は苦笑いした。

「あいつお前しか見えないみたいだから…無理につき合えとは言わねーけど、そこら辺の気持ちも考えてやんな」

「…………」

りょうの返事を待たずに、直人は教室に戻った。