「うわ、何やってんだお前ら…」

キノの体勢に直人はギョッとした。

「いいから、助けて!」

りょうは急かすように直人の服を引っ張った。

「わかった」

直人はぶら下がったキノの体の横から潜り込み、向かい合うようにキノの腰を抱き上げた。

「キノ、手はなしていいぞ」

「ん…」

キノはぱっと手すりから手を放し、よほど怖かったのかそのまま直人の首に抱きついた。

「よしよし…」

直人は子供をなだめるようにキノの頭をなでた。

「もう…」

りょうは涙目だった。

直人の肩から降りて階段に座り込んだキノは、二人に謝った。

「ごめん、直人…りょうも」

「いーけど…何でこんなこと…」

直人がため息をつくと、キノとりょうは気まずそうに俯いた。

二人の表情から何となくは想像がついた。

「………まぁ、ほどほどにな。俺戻るから」

直人が階段から足早に降りていくのを、りょうが呼び止めた。

「直人」

「…ん?」

「ありがとう」

直人がいなければ、キノは確実に落ちていた。

「別にいーけど…何で俺だけ呼んだ?」