「いいから、入ろ」

笹木は伊澄の肩を抱いて、半ば強引にマンションの入り口へ向かった。

「え…大丈夫?ここ」

「大丈夫だって、俺前に来たことあるし」

「なんで?」

どゆうゆ機会があれば、こんな場所に足を踏み入れるのだろう。

「まぁ、いいじゃん」

やっぱり、今日の笹木はどこかおかしい。

(どぅしよう…怖くなってきた)

こんな山奥、助けを呼んでも誰もこない。

(てゆうか、幽霊でそうだし…)

戸惑いつつも、笹木に手をひかれて階段を最上階まで登らされた。

「足、痛い…」

「もう少し、頑張れ」

階段の奥にある、重そうな扉を笹木が開ける。大分使ってないのか、開けるとき、耳を塞ぎたくなるような音がした。


「……!」

伊澄は恐怖で目をつぶっていた。

「伊澄、目あけて」

「……なに?」


伊澄が目をあけると、そこはマンションの屋上だった。

「え…?」

「もっと向こうにいこ」

笹木に言われるまま、手すりまで歩いた。

「キレイじゃない?街が見渡せるの」

「…ほんとだ」

下の方をのぞくと、そこには街の明かりが遠く光っている。

「山奥だから、星も見えるしね」

「…うん」

見上げると、そこには満天の星空が広がっている。

「これ見せるためにわざわざ?」