キノは手すりからぶら下がった。

「…んっ」

苦しそうに顔を歪めながらもキノは懸垂を始めた。

「1、2、3…りょう」

「なに?」

キノの声は震えている。

「な…なんかい…すれば…いい?」

「も、もういいから上がってきて」

ここで落ちたりしたら、男らしいとか以前の問題になる。

「いや…あの…」

「なに?」

「ぶら下がるので…精一杯で…」

もう自分の体を上げる余力は残ってなかった。

「えっ…じゃあ誰か呼んでくるから」

「…ごめん」

「いいよ、いいから」
りょうはキノの体力がもつことを願いながら、走って2年5組に向かった。

丁度、廊下で土屋とヒノケンと直人がつるんでいるところが見えた。

「直人!きて!」

いきなり手を引っ張られ、直人は慌てた。

「な、なに?」

「どしたの、りょう」

「いいから!あんたらはついてこないで!!」

思わずあとに続こうとしていたヒノケンと土屋に制止をかけた。

「なんだよ、りょう!」

「日和が…」

「は?」

屋上の階段のところまで直人を連れてくと、相変わらずキノはぶら下がったままだった。