「なんで」

「ここのが狭くて、りょうに近いから」

そう言うキノは、とても嬉しそうだ。

「…少女マンガじゃないんだから」

りょうは、キノのそんな所が苦手だった。

(りょうが男で、日和が女の子だったら…)

今のキノのセリフで俗にいう胸キュンなんかもできたのかも…と思うが。

「りょうはどんな男が好きなの?」

「男らしいひと」

「男らしいって、どんな感じ?」

(………………)

少しの間、一考して答えた。

「そこの階段の手すりからぶら下がって懸垂できる人」

小心キノにはできないであろう、無茶を言ってみた。

「よしっ」

キノは間髪いれずに手すりからぶら下がろうと、手すりに足をかけた。

「ちょ、危ないって」

「大丈夫!!」

まさか、本当に挑戦するとは思わなかった。もし、失敗して落ちたりしたら……ヘタすれば死ぬ。

「別に、手すりからぶら下がったって、りょうとつきあえる訳じゃないんだから…」

「わかってるけど…でも俺のこと、少しは見直してくれるでしょ?」

「見直すは見直すけど…」

ちょっと違う気がする。

「じゃあやってみる」