「若い内は、思いのままにぶつかりあって成長していくことも大事だよ…個人的には少しうらやましいかな」

「うらやましい?」

「大人になると…そんな事もあまりなくなるから…」

と言いつつ、伊澄は直人のことを思い出した。

『……ロボットみたい』


『人の気持ちなんて変わるものじゃない!前に決めた事でも後になって…』

『伊澄ちゃんが感情に振り回されすぎなだけだよ』

(……そんな事も、あるかも…結構)

でも正直、直人があんなに頑なだと思わなかった。

もっと、柔軟で思いやりのある人だと思った。

(まぁまだ高校生なんだし、期待しすぎか…)

その高校生相手にムキになってしまった自分も自分だが。

「そういえば伊澄ちゃん、どこ行ってたの?」

「さっき?」

「うん」

伊澄はポツリと答えた。

「2年5組」

「聖也たちのクラスだよね?」

「うん。今日の朝、風間くんが忘れ物してったから…届けてきた」

(風間くん、大丈夫かな……)

「ふーん…」

「広瀬さん、は、風間くんどう思う?」