「水澤くん!」

「はよー」

伊澄を見て、軽く笑いかけた直人はそのまま階段を上がろうとした。

「あ…ねぇ、水澤くん」

「ん?なに?」

呼び止めらた直人は振り返った。

「あの…風間くん、今日学校きたよ」

「マジ?今いんの?」
普段クールな直人だが、少し声が高くなった。

「今は…もう帰ったんだけど…」

「…そっか」

直人は少しうつむいた。

「保健室にきたんだけど…大分参ってるみたいで」

「………」

「水澤くん、ミサキちゃんと風間くん会わせることってできない?」

協力してくれるだろうと信頼して伝えた伊澄だが、直人のリアクションは思いもしないものだった。

「……何で?」





(………何でって)

「ミサキちゃんの連絡先知ってるの、水澤くんだけでしょ?」

「そーだけど…聖也がそうしてくれって言ったの?」

「言ってないけど…でも、風間くん彼女のことで参ってるんでしょ?」

聖也が学校に来なくなったのは、岬の妊娠を知ってからだ。

「そうとは限らないじゃん…何で俺がそこまで節介しなきゃだめなの?」

「え…」

「あいつらはもう終わって、お互い連絡だってとれない様にすることも二人が決めたことだ」