「あー、こないだ俺らも思ったけど、とれないって」

土屋は頭の後ろで腕をくんだ。

「もう、会えないのかな?」

「直人が岬ちゃんの連絡先知ってるけど…」

「てか、あいつ遅くない?」

廊下を見渡しても、直人のくる気配はない。

「松下先生?」

後ろを向くと、英語の担当教諭がいた。

「何かありました?」

「生徒が忘れ物したので、それを届けに…」

「そうですか」

「じゃーこれは俺が預かっとくよ」

キノはリングを自分のポケットにしまった。

「よろしくね」

伊澄は英語教諭にかるく会釈して、教室を後にした。

(水澤くんが知ってるなら…水澤くんに頼めば…)

あの5人のリーダー格で兄貴肌の直人ならきっと協力してくれる。

(優しいし…)

しかし、先ほどの教室に直人の姿はなかった。

(…遅刻かな?)

そんな事を思い巡りながら階段を降りていると、下から上がってきた直人にぶつかりそうになった。