「養護教諭一人?」

「本当はもう一人年配の男の人がいたんだけど…階段から落ちて、ケガしちゃって今入院してるの」

「…変なやつとかに狙われてない?」

男ばかりの高校で、彼女が一人となるとやはり心配なようだ。

「大丈夫だよ!高校生なんか、ガキにしか見えないし。最初はシモネタとか言われてひいたけど、もう慣れたし」

「そっか」

そう言って、男は自分のグラスを飲み干した。


笹木圭吾(27)。配工員で、3ヶ月くらい前に友達の紹介で知り合い、2、3度のデートで告白されて、つき合う事になった。


「そっちの仕事は順調?」

「ん、まぁまぁ」

「ふーん…」

急に笹木は立ち上がった。

「場所変えようか」

足早な笹木を追いかけるように、伊澄は店を後にした。

笹木の車に乗り込み、しばらく走らせると、だんだん山奥に入っていった。

「どこ行くの??」

「着いてのお楽しみ」
笹木は怪しく笑った。

その笑顔が、なんだか伊澄には怖く感じた。

(大丈夫かな…)

笹木はどちらかというと真面目な感じの男性で、あまりサプライズとかしないタイプだ。

(今日、記念日とか誕生日でもないしな…)


「着いた!」

「…?」

笹木は、1軒のボロマンションの前に車を止めた。


「…なにここ。」