(今更だけど…風間くんとキスしたんだよな…)

聖也の方は覚えているか微妙だけれど。

(…でも、あやかって…ミサキちゃんの事だよな…間違えたのかも)

きっとそうだ。

もう戻れなくなってしまった彼女の名前を泣きそうな顔で呟いた聖也を思うと、胸が痛んだ。

(何とかできないのかな…)

まだ1限が始まる前なので、教師は来ていないだろう。

窓から教室をのぞくと、ちょうどヒノケンの坊主頭が見えた。

「火野くん」

「うわっ、伊澄ちゃん!」

後ろから声をかけると、ヒノケンは振り返り、ビクッとした。

「風間くん、帰っちゃった?」

教室を見渡す限り、聖也の姿はない。

「えっ?聖也、来てたの?」

「うん…保健室に…」

「まじっ?!ちょ、キノ!土屋!聖也保健室きたって」

ヒノケンの呼びかけに、少し離れたところで話していたキノと土屋が集まった。

「保健室で?帰ったの?」

「私が職員会議から保健室に戻ったら、ベッドで寝てて…嘔吐して帰るって出てったけど…」

(もしかして…直で保健室きて、直で帰った?!)