「ほら、水…うがいして」

伊澄は一通り吐き出した聖也を洗面台に連れていき、コップを差し出した。

「………」

聖也は無言で受け取り、口をすすいだ。

「大丈夫?横になる?」

「……帰る」

「え?」

聖也はそのまま保健室から去っていった。

「………」

(大丈夫かな…)

ベッドに戻り、聖也の吐いた後片付けをした。

聖也の様子を察してゴミ箱を差し出したのは、我ながら機転がきいていた。

(ベッドの上ではかれてたらと思うと…)

そう思いながら掛け布団をめくると、ベッドの上にリングが転がっていた。

いつも聖也が人差し指にしているブランドのリングだ。
ゴツくて目立つデザインだから覚えている。

(教室かな…帰ってるかも)

聖也のリングを白衣のポケットにいれて、乱れた白衣と髪を直し、聖也たちのクラスへむかった。