「…真衣ちゃん」

「はい?」

ピークの時間を過ぎて、片付けの準備をしていた頃、厨房から風間さんが手招きした。

「…?」

よくわからず、厨房に入るとキッチン台に、ミルクキャラメルのガナッシュが置いてあった。

「さっき練習で俺が作ったんだ。試食してみて」

「…え、いいんですか?!」

「ん。さっきはああ言ったけど、やっぱ実際食べてみるのが一番いいしさ…ま、全メニュー制覇しろとは言わないけど(笑)」

そう言って、はい…とスプーンを差し出してくれた。

「風間さんは食べなくていいんですか?」

「俺も食ったよ。でも、せっかく作ったんだから、誰かにも食べてもらいたいし…」

よく見ると、ガナッシュには、少し食べかけたあとがあった。

「ありがとうございます」

スプーンを受け取り、ガナッシュを口にいれた。

「…ちょっとホワイト多かったかな?」

「…なんか、やさしい味です」

「あ、うすい?」

私が微笑みかけると、風間さんは真顔で返してきた。

「いや、そうじゃなくて…甘さが丁度よくて」

私は慌てて訂正した。