すごい、味とかちゃんと覚えてんだ…。

「ありがとうございました」

「いや、いいよいいよ」

私が深々と頭を下げると、風間さんは少し照れたように前髪をあげた。

「…風間さんて、ここのケーキ試食してるんですか?」

「いや、してないよ。さっきのも食べたことないし」

「え、でも…」

(あんな丁寧に味の説明して…)

「まぁ、テキトー?」

風間さんはヘらっと笑ってみせた。

「たまに厨房手伝うから、作ってるの見てたら大体想像つくじゃん?」

「でも、もし言ってたのと違うって怒られたら…?」

確かに、大体は何となくわかるけど……もし味が違ってて、クレームになったら……と思うと何も言えない。

「人の味覚なんてそれぞれ違うんだから、参考程度に聞いてきただけでしょ。そこまでズレがなければ、客だってそこまでは怒らない」

「…ほー」

…なんてゆうか、要領、いいな。

高校生とは思えない。

(こうゆう人が、出世するんだろうな…)

「おいしかった、また来るね」

「はい、お待ちしてます」

先ほどの友達連れの女性は、笑顔で風間さんに手を降って帰っていった。