眠っているように見せていたが、先程のショックで頭が冴えて全然寝れなかった。

『次は中曽根~』

アナウンスが流れると同時に目を開けた。

「………」

ななめ上を見上げると、直人が笑いかけてきた。

停車してドアが開き、二人で並んで降りた。

「…伊澄ちゃん、いつもこんな時間にきてんの?」

「いや、今日は寝坊しちゃって…さっきは本当にありがとう」

今いるのが駅のホームということも忘れて、深々と頭を下げた。

「いいよ、これからは気をつけてな」

「え?」

「なおとー」

伊澄が問いかけると同時に、向こうから男子生徒が直人に手を降っているのが見えた。

あの4人ではない…名前は知らないけど、顔は見たことある。おそらく、部活の友達かなにかだろう。

「じゃ、あいつ呼んでるから」

「うん、ありがとね」

自分から離れていった直人の背中は、自分が思っていたよりもたくましく見えた。