少し涙目で顔をあげると、直人の顔があった。

「…大丈夫?」

「…え?」

「…顔色悪い。ここ座っていいよ」

直人は席から立ち上がり、伊澄の手をひいた。

「で…でも」

後ろの手も直人の声に手をひいた。

「いーから」

そう言って伊澄の腰に手を回して、少し強引に座らせた。

「ありがとう」

恥ずかしかったので、少し顔伏せてお礼を言った。

「いーよ、疲れてんなら寝てていいから。着いたら起こすし」

「…うん」

正直、周りからの視線が痛くて目をつむっていたい気分だ。

(…優しい)