1度あたり、離れた。

(…気のせいか)


一瞬、痴漢かと思ったけど。


電車が駅に止まり、また走り出した頃、また何かが当たる感触がした。


「……?」

今度はなかなか離れない。

少し、生暖かい感触…。

(かばんじゃない?)

しばらく硬直していると、それは伊澄のお尻を撫でるように動き出した。

(やだ…痴漢?!)

逃げ出したいが、電車は走り出したばかりだ。

相変わらずの満員で、身動きがとれない。

(いつもの時間だったらこんなことないのに…)

しかも目の前には直人が座っている。

(絶対、バレたくない…)


直人は少し眠そうな目でボーっとした様子だ。